KIBI CRAFT

 

工房日誌

まだまだ塗る 2011.09.23
肌寒い日が続きます。
こんな時はカレーを食べると何となく1日中体調が良い気がします。
ご自愛下さい

久しぶりにアンティークチェア塗装のお仕事です。
自慢じゃありませんが滅多にご依頼がありません。

もとはと言えばアンティークが好きでこの業界に入り
その後、塗装とは仕上げとはと考えているうちに興味が収まらず、
補修や塗装に手を出し、今に至ります。

なんだか奥の深い世界ですが
面白い仕事です。

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この椅子は厳密に言えばアンティークといいますか、
リプロ と呼ばれる類いの物で、1930年頃でしょうか、
エリザベス様式を模して作られた物だと思います。

実際お店で販売される時は、便宜上この辺の物はアンティークとして売られる事が殆どですが
作りもしっかりしていて十分実用に耐える
正に生活骨董といった素敵な椅子です。

こういった英国アンティークは主にシェラック(ラック、セラック、シケラックとも言う)という
塗料が使われています。
シェラックというのは、ラック虫の分泌液を精製して作られた、琥珀色した飴の様な物で
これをアルコールなどで溶いた物を家具の塗装などに用います。

フレーク状のシェラックからアルコールを混ぜて作ってもいいですし、
塗料になっている「セラックニス」や「なんちゃらポリッシュ」のようなネーミングで
売られている物もあります。

これを「タンポ」と呼ばれる布に綿を詰めテルテル坊主状にした物で(ちょっと極端ですけど)
ぐるぐるに撫でたりしながら塗る方法が良く言うフレンチポリッシュと呼ばれる技法です。

日本で言うタンポ刷りがこれにあたります。

フレンチポリッシュで塗られた物は独特の光沢があり英国アンティークでは良く用いられる
仕上げです。

非常にデリケートな塗膜でコンディションの維持はウレタンなどに比べ難しいですが、
とても美しい仕上げとなります。

うちでは今の所そういったオーダーが皆無で、シェラックを常備していませんので
施工する事は無いのですが。

ばらしてみると、
少なくとも日本で2度は手が加わった形跡がありました。
座面下にある補強の為の隅木が如何にも国産のプラスビスで
その後に修理した人が隅木を含めあちらこちらタッカーで
特にばらす事もなく止めていった様です。

わざわざビス止めされている隅木をばらさずに
タッカーで止めようというんですからよっぽどせっかちです。

塗装はシェラックの上にウレタンをかぶせてあり、(普通そんなことしません)
その上に色付きワックスが刷り込まれていた様です。

何はともあれ色々考えさせてくれるのも古い家具故。

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ダボの折れをタッカー止めで何とか押さえていました。
椅子のオーナーが直したものでしょうね。

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全体に少し色を濃く、色が薄くなった所を元の色に、とのことで
手前の椅子が組み終わり補色した物で、
奥の椅子が塗装前です。並べると色の違いがお分かり頂けるかと。

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2脚共仕上がりました。
どちらも良い表情をしています。